ぱぱんエッセイ:一番おいしいパン屋

先日、天五中崎商店街にある「ブルンネン」での出来事。
パンを選んでいると、一人のお客さんが。背中を向けていたので、外国人の女性ということしかわからなかった。
理由はわからないが、どこか忙しい様子が背中越しでも窺えた。
するといきなり、「Can you speak english?」という声が聞こえた。店員にではない。私にだ。
ここのパンのことを訊きたいのだろうか。しかし私のプアな英語力では理解はできるが伝えることはできない。などと答えるヒマもなく、彼女は私に向かって英語でまくしたてた。しかもちょっと興奮した様子で。
どうやら、ここのパン屋がとても素晴らしく、一番おいしいパン屋だということを私に説明してくれているようなのだ。
もちろんここがおいしいパン屋だということは知っているが、大阪には他にもおいしいパン屋がたくさんあり、ましてや京都にはもっともっとおいしいパン屋がたくさんある。と言い返したかったが、できるはずもない。
店員さんが流暢な英語で答えた後、私にも彼女が言ったことを説明してくれた。
その女性は息を弾ませながら私に微笑みかけた。私はそれに愛想をするので精一杯だ。
精算を済ませて外に出ようとすると、その女性は楽しそうにパンを選び始めた。
言語や文化を越えて、おいしいものは世界共通なのだ。
あの時もし私が英語を話せていたら、今頃きれいな外国人の女性と京都でパン屋巡りをしているかもしれないなあ。